ごまだれ

感じた想いを書き残す場所

本当? 2021年の競馬はウマ娘ブームで入った人たちに都合のいい事ばかり起きていた


1年前はこうなって欲しい期待はしてたけどこんなになるのは予想してないよ(嬉しい悲鳴)

皆さんこんにちは。
2021年も間も無く終わろうとしています。
今回は先日行った競馬布教配信を補足するような内容になります。
配信もぜひ聞いてみてください

 

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ウマ娘、めちゃめちゃ流行ってしまう

2021年はウマ娘プリティーダービーのアニメ2期、そして待望のスマホアプリ版がリリースされた1年でした。
2016年3月のAnimeJapanで発表されててから5年、紆余曲折も数多くありましたが本当にリリースされて良かったです。
アニメ1期の内容で過去の名馬が持つ強力なコンテンツ力をちゃんと扱ってくれると確信しましたし、アプリがリリースされれば実際の競馬への入口になってくれる期待はありました。

ですが、ここまで爆発的にヒットした現実は頭の中の誇大妄想で考えてた事より上の状況なのよ(嬉しい悲鳴)

リリース直後に楽天の田中投手がウマ娘を始めたツイートや、ゴールドシップの厩務員だった今浪さんが「本物のゴルシより(育成が)難しい」というパワーワードが生まれたあたりから、風向きが変わった感じはありましたが

カレンチャンが育成実装時に、当時実馬を調教助手として面倒を見ていた安田翔伍調教師が実際の写真をアップしたり

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こんな高画質なマルゼンスキーの映像が見れるとは…

関西テレビ東京スポーツなどの競馬メディア、そしてJRA地方競馬の主催者が当時の貴重な映像、記事を紹介し沼への入り口をどんどん整備し始めたりし始めたことは、結果的に昔から見ている人にも嬉しい事でした。

そして競馬関係者やJRAの機関紙「優駿」の記事の中で特に注釈もつかずに「ウマ娘」の言葉が使われたり完全に浸透した結果、年末には有馬記念デーの中山競馬場海上自衛隊の音楽会で「うまぴょい伝説」が演奏されるまでになってしまいました。

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10ヶ月でここまで来るのはいくらなんでも出来すぎです。

dot.asahi.com

競馬沼へようこそ

武豊騎手のインタビュー内でJRAの馬券のネット投票のアクセス数が20代と60代が並ぶ水準になっている話も俄には信じられない流行りっぷりです。

自分もこの千載一遇のチャンスを逃すまいと、自分の身近な人たちを沼に落とすためにウマ娘血統の記事を書いたり、POG布教配信をしたりしました。
身近な人が馬券で楽しむ方、推しの馬を追いかける方、写真を楽しんでる方、一口馬主を始める方まで現れました。めっちゃ嬉しいです。

gomap.hatenablog.com

2021年の競馬も凄かった

2020年はコントレイルとデアリングタクトが無敗での牡馬牝馬3冠を達成し、ジャパンカップでアーモンドアイと史上初の三冠馬3頭の夢の対決が実現しました。これ以上の年はもう訪れないのではないか?と思う1年でしたが、2021年もその熱気を引き継ぎ、とても面白い1年でした。

競馬を長く見ていた自分にとっても良かったと思う事が多くありましたし、特にウマ娘経由で競馬を見始めた方が触れた競馬が2021年で本当によかったと思っています。そういう方が夢中になってくれるトピックや競走馬に溢れた本当に都合がいい1年でした。

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ウマ娘から競馬を始めた人に都合が良かった理由

「そんなに都合が良かったの?」と思われる方もいると思いますが、2021年の競馬は

1.数多くの歴史的快挙が達成された
2.ウマ娘に縁のある競走馬が大活躍した

という1年でした。

日本競馬史に残るBC初勝利

2021年に達成された快挙として真っ先に挙げられるのは11月に米国・デルマー競馬場で開催されたブリーダーズカップで日本調教馬の初勝利を含む2勝をあげた事でしょう。

競馬のスーパーボウル

ブリーダーズカップ(BC)は1984年に創設されたアメリカ競馬の一大イベントで、現在では2日間で世代、距離、性別、芝ダートなどの各カテゴリ別に13のG1競走を含む14レースが開催されています。BCはNFLスーパーボウルのような1年間のチャンピオンを決めるイベントの競馬バージョンとして米国では紹介されています。
世界5大陸から参加者が集まる競馬の祭典は欧州の凱旋門賞と並び、世界中の競馬関係者が勝つことを夢見ているレースです。

ラヴズオンリーユー&川田将雅騎手の歴史的初勝利 

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その歴史に残るブリーダーズカップの勝ち馬第1号となったのはフィリーアンドメアターフ(芝2200m)に勝利した2019年のオークスラヴズオンリーユーです。
騎乗した川田将雅騎手にとっても、日本人騎手として初のBC優勝を達成!
最後の直線で馬群をこじ開けて一瞬で突き抜けて優勝する姿は、朝6時スタートで寝ぼけながら見てた私の眠気を一瞬で覚ますくらい興奮するものでした。
普段は冷静でクールな川田騎手も小さい頃からの憧れのレースだったBCを勝った後のとても嬉しそうな表情と手でハートを作って記念撮影する姿が印象に残っています。

BCゆかりの血統がアメリカに凱旋

実この血統には2頭のBC勝ち馬がいます。2代父は89年のクラシックを勝ったサンデーサイレンス、3代母は1987,88年のマイルを連覇したミエスクというどちらも世界的な名馬です。その遺伝子はディープインパクトとラヴズオンリーミーに受け継がれ、日本で生まれたエリート血統馬がラヴズオンリーユーです。

特に血統を評価されず日本に渡ったサンデーサイレンスの血が日本競馬の血統を塗り替え、ついに日本調教馬初のBC勝利をもたらした事は非常に嬉しかったし、感慨深かったです。

マルシュロレーヌの大偉業

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一方で、競馬を長く見ていた人にとって衝撃的な勝利はマルシュロレーヌのディスタフ(ダート1800m)でした。4コーナーで先頭に躍り出るとそのままゴールまでハナ差粘り切る展開に大興奮。現地の人気も下から3番目。勝った事が信じられず暫くは鳥肌が止まりませんでした。
海外ダートG1初勝利はダート牝馬の世界最高峰を決めるディスタフ、ラヴズオンリーユーと同厩舎のマルシュロレーヌが決めました。

日本競馬は芝に関しては世界のトップレベルで、ライバルになるのは主に欧州からの遠征馬。日本に近い米国のコースと芝ならラヴズオンリーユーのようなトップホースが遠征すれば勝つチャンスがあるはずと考えられていましたし、実際にラヴズオンリーユーがそのチャンスをものにしました。

一方のダートはアメリカ競馬が主流でダービーに当たる競走もダートで行われています。そしてダートの質も競馬スタイルも日本のダート競馬と全く異なる条件でマルシュロレーヌは勝ってしまったんです。しかも勝った相手がアメリカ競馬の名実共にトップの牝馬たち。
ダート馬の海外遠征ではずっと苦戦をしてきた歴史があるため、ディスタフやクラシックのダートの王道路線で勝つことはそもそも勝てると思っておらず、凱旋門賞より遥かに高いレースと思っていました。それがまさか…という超偉業です。

・オグリの系譜に連なる日本で育った血統

特に注目すべきなのは、この馬の牝系が約100年前に豪州から輸入されたシユリリーという馬から日本で脈々と繋がって生まれたマルシュロレーヌが勝ったという事実です。その途中にメジロドーベルのライバルとして有名な桜花賞馬の祖母キョウエイマーチが生まれ、その娘に3冠馬オルフェーヴルを配合されて生まれたのがマルシュロレーヌです。

つまり、彼女は日本の環境で勝つための血統じゃない(=特にアメリカのダートで勝つための配合されていない)んです。この血統で海外の大レースを勝つならば凱旋門賞などの欧州のレースになるはずなんです。なのでディスタフを勝った事はめちゃくちゃスゴイんです。しかも血統にメジロマックイーンキョウエイマーチ、血統をさらに遡れば日本競馬草創期の大種牡馬やクラシック勝ち馬が並んでいます。感動です。

ちなみに7代母のクインナルビーから枝分かれした遠い親戚にオグリキャップがいます。幻に終わったアメリカ遠征から約30年後に、その系譜を持つ馬が勝つ事も本当に感慨深いです。

そんな1年だったので、2021年にウマ娘
アニメやゲームで大ヒットをしたウマ娘にリンクするようにウマ娘のモデル馬にまつわる馬や人が活躍し始めたんです。

横山武史騎手、日本競馬の若きエースに!

2021年の競馬を語る上で絶対に欠かせない人馬がいます。横山武史騎手とエフフォーリアという馬です。

1998年生まれの若武者・横山武史騎手は2020年に史上最年少で関東リーディング(最多勝)を獲得し、21年はさらなる飛躍が期待されていました。
2021年の目標は年間100勝とG1勝利でしたが、今年の活躍はその目標を大きく上回るものでした。

2021年はエフフォーリアでG1初勝利となった皐月賞天皇賞(秋)有馬記念タイトルホルダー菊花賞キラーアビリティホープフルSの合計5勝をあげ、ルメール騎手と並んで最多勝タイ、年間勝利数も104勝、通算300勝も達成しました。

たった1年でここまで突き抜けてしまいました。G1初勝利から歴史ある八大競走を半分勝ったこと、複数の馬で勝ったことはヤバいです。記憶する限りでG1初勝利から1年でこの成績を上げたのは騎手はおそらく武豊騎手以来です。この記事は12月上旬から書いていて、最初は若き騎手のエース候補と書いていたんですが、有馬とホープフフルの勝利で確実に日本競馬を背負うエースになったと思います。
ウマ娘が配信された年に、ずっと欠けていた日本出身の若いスター騎手というピースが現れたことはめちゃくちゃデカイことだと思います。

父と同じ22歳で挑んだクラシック

2月の共同通信杯でエフフォーリアを勝利に導き、父である横山典弘騎手と同じく22歳でクラシックを有力馬と共に向かうことになりました。典弘騎手は1990年メジロライアンとのコンビでクラシック3冠に挑みましたが無冠に終わってしまい初G1は菊花賞の翌週のエリザベス女王杯でした。息子の武史騎手は皐月賞でエフフォーリアを導き完勝。初のG1勝利を達成しました。この時のエネルギーあふれる爽やかなインタビューは多くの人の印象に残っています。

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この勝利で武史騎手はダービーを1番人気で迎える事になり、同時に史上最年少勝利に挑むことになりましたが、福永祐一騎手のシャフリヤールにハナ差(10cm)の2着に敗れていました。
振り返るとこの敗戦は秋の競馬のドラマの大きな起点になりました。

武史騎手飛躍の秋

そして迎えた秋、武史騎手は更なる飛躍を遂げます。エフフォーリアとのコンビで天皇賞(秋)有馬記念を勝利するだけでなく、タイトルホルダーで菊花賞を勝ち騎手として2冠、2歳G1のホープフルSではキラーアビリティを優勝に導くなど、複数の馬でG1を勝利しました。

驚きの騎乗は菊花賞です。武史騎手はタイトルホルダーで5馬身差の逃げ切り勝ちをしたのですが、逃げ切りで勝ったのが父典弘騎手が乗った98年のセイウンスカイ以来。しかもレースの作戦もその時とほとんど同じ。
多くの人を驚かせたその作戦は

1.最初の1000m飛ばして
2.中盤の1000mでペースを落としてスタミナを温存し
3.最後の1000mをスパートして押し切る

というものでした。デビューして5年目の騎手が簡単にできる乗り方じゃないんです。

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このように武史騎手のG1勝利の多くが馬の力だけでなく、彼自身の腕で有利な状況を作り、馬の力を引き出して勝っている事も大きいポイントです。

エフフォーリア

その武史騎手を大きく成長させた馬の中心となったたのが21年の年度代表馬になるでしょう、エフフォーリアです。新世代の幕開けを告げるよう今年3歳の若い馬が年上のトップレベルの馬を打ち破り頂点に立ちました。
天皇賞(秋)では無敗の3冠馬コントレイル、2000mに挑戦してきたマイルの女王グランアレグリアを破り、2002年祖父のシンボリクリスエス以来の3歳馬の制覇、返す刀で有馬記念ではグランプリ3連勝中のクロノジェネシスを撃破。名実ともに世代交代を起こし、国内現役馬ナンバーワンの地位に立ちました。
3歳で天皇賞(秋)有馬記念を同時制覇したのもシンボリクリスエス以来、春のクラシックを勝った上での"変則3冠"は史上初になりました。

2つの二つ名

エフフォーリアには有馬記念前後に早くも2つの二つ名がつきました。1つ目はネットで呼ばれている"F4"から戦闘機を連想させる事で名付けられた"撃墜王"です。倒した相手もコントレイルを含む世代のチャンピオン達なので非常に合っている二つ名です。

一方で彼は「競馬マシーン」とも一部でネタ的に呼ばれています。「ダービーで負けたショック」のせいで感情を失い「冷徹に勝利を渇望する」というキャラ付けまでされています。それはそれで漫画のキャラみたいでカッコよさはあります。

そう呼ばれている理由は右目だけ三白眼でちょっと怖い目つきに見える事があったり、真顔でにんじんを食べる動画が話題になったりした事もありますが、実際にパドックで獲物を狙うような目つきにはオーラを感じますし、常に安定したパフォーマンスで走る姿はまさに機械のようです。
そんな風に呼ばれた馬はシンボリルドルフミホノブルボン等の名馬中の名馬くらいしかいないので、却ってエフフォーリアの凄さが際立つ二つ名ではあると思います。

ウマ娘血統

さらに凄いことはそんなエフフォーリアがいわゆる"ウマ娘血統"だったという事実です。

エフフォーリアの父はエピファネイア。その母は日本調教馬として初めてアメリカのG1を勝った名牝シーザリオからスペシャルウィークとまるせマルゼンスキーの血を受け継いでいます。

初年度から無敗の牝馬3冠馬デアリングタクト、2世代目ではエフフォーリア、今年の2歳ではサークルオブライフという3頭のG1馬を輩出し、ディープインパクト後の新世代の種牡馬の主役に大きく近付く事になりました。スペシャルウィークの血はエピファネイアを含めたシーザリオの息子たちから大きく広がり、未来の多くの馬の血統表の中に確実に残る事になるでしょう。

母方は実はヒシアマゾンに縁のある血統です。祖母のケイティーズファーストという馬がヒシアマゾンの姉に当たります。

エピファネイア産駒の牡馬のG1馬がこういう背景を持った馬になる…出来すぎです。

まだまだ偉業はたくさん

コレ以外にも偉業はたくさんありました。

ソダシ、白毛馬初のクラシック優勝

今年の競馬を牽引した1頭に間違いなく入るのが白毛ソダシです。
昨年の阪神JFに続き桜花賞を勝利、札幌記念ではラヴズオンリーユーを下し、秋にはダートにも挑戦するなど重賞2勝の活躍をしました。

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マカヒキの復活劇

感動を呼ぶレースを見せてくれた馬も多くいました。2016年のダービー馬マカヒキ京都大賞典で5年ぶりの優勝を果たし、レース後も拍手が上がるほどの感動に包まれました。

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感動の復活にドラえもんまで祝福?のツイートをする程でした。

オジュウチョウサン中山大障害でJ・G1 8勝目

ジャンプレース界の絶対王者に君臨してきたオジュウチョウサン、春の中山GJで敗れJG1の出走機会連勝が7でストップしてしまいましたが、他のライバル達がケガで離脱する中、骨折から復帰しこのレースに照準を合わせてきたオジュウチョウサンが昨年の中山GJ以来の勝利を飾りました。

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「この相手ならチャンスある」と自分は思っていましたが、強い時に見せていた走り方で復活劇を見れた時は本当に嬉しかったです。上位の馬が引退したこともあり、2021年12月31日時点で現役馬の獲得賞金ランキングのトップに立ちました。平地も含めたJRAのG1勝利数ではアーモンドアイに並ぶ8勝目になりました。

ヨカヨカ、熊本産馬初のJRA重賞制覇

デビュー前から調教で動く事で話題になっていたヨカヨカ。北海道に比べると馬産の規模も100分の1の中からG1に出走、重賞まであと一歩だったヨカヨカは8月、小倉の北九州記念で遂に重賞初勝利をあげました。地元のファンも拍手喝采、騎手も鹿児島出身の幸英明騎手というおまけつきでした。

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秋のスプリンターズSに向けて勲章を手に入れたヨカヨカでしたが、調教中に不慮の出来事で骨折、そのまま引退となってしまいました。
ヨカヨカの物語はこれで終わり…のはずだったのですが、この物語には続きがありました。(後述)

ゴールドシップ産駒がついにG1を勝った!

ゴールドシップ産駒に初G1をもたらしたのはオークスでのユーバーレーベンでした。この馬は3月に亡くなられた名ホースマンの岡田繫幸総帥が創設した一口馬主クラブの馬です。クラシックの勝利が今までありませんでしたが天国の総帥に捧げるオークス制覇になりました。

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ウマ娘血統馬の大活躍

このように、快挙やドラマチックな事もたくさん起こった2021年でしたが。
ウマ娘がリリースされたこの年、エフフォーリアに限らずウマ娘に縁のある馬や人の活躍が目立ちました。

ただのウマ娘血統ではない馬たち

ウマ娘血統の馬はご存知のよう結構たくさんいますし、エピファネイアやモーリス、ドゥラメンテなどの種牡馬として活躍が期待されている馬やオルフェーヴルやゴールシップなどのすでに活躍している種牡馬もいたので「活躍しないと困る」と馬だったのは事実です。
…事実なのですが、活躍をした馬は「よりによってそんな血統が!?」という馬も多かったんです。そこがウマ娘に都合が良すぎるんです。

グラスワンダーのひ孫が快挙達成

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2021年のスプリンターズステークスは3歳馬のピクシーナイトが優勝し、モーリス産駒としての初重賞勝利に続き初のG1馬になりました。この馬はグラスワンダーの血を直系で引くモーリス産駒で、さらに母父は同じ1995年生まれのキングヘイロー、さらに母の母父はサクラバクシンオーとなっている代表的なウマ娘血統の馬です。モーリスはマイルと2000mの2階級でG1を勝った名馬でしたが、ピクシーナイトはキングやバクシンオーが輝いた1200mでのG1タイトル奪取となりました。

同期2頭がいるたまらない血統背景

netkeibaのツイートにもありますがグラスワンダーから続く日本調教馬の父系直系4代G1(級)制覇の史上初の快挙になりました。

2022年に27歳になるグラスワンダーは2020年まで長く種牡馬を続け、最後の世代は来年デビューします。高齢になるほど繁殖能力は落ちていくものなのですが、3歳世代には3勝クラスで活躍するヴァトレニを出しています。5月にはグラスワンダースクリーンヒーロー、モーリスの産駒がJRAで同日に勝利する快挙がありました。
ピクシーナイトは香港スプリントの落馬に巻き込まれ骨折をしていまいましたが、無事に血を繋いでいってほしいと思います。
モーリス自身が4歳以降に強くなった馬なので、初年度が4歳になるこれからのモーリス産駒にも期待です。

ドゥラメンテが勝てなかった菊花賞で初G1

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横山武史の項目で紹介したタイトルホルダーの父はドゥラメンテ、その母はエリザベス女王杯を連覇したアドマイヤグルーヴ、その母はエアグルーヴです。強烈な末脚で2015年の皐月賞、ダービーを勝ちましたが、故障で三冠の夢は幻に終わりました。翌年に復帰しましたが、宝塚記念後に再び故障、そのまま引退し種牡馬入りしました。
ドゥラメンテは2021年8月31日にわずか5世代を残して9歳の若さで亡くなってしまいましたが、タイトルホルダーは天国の父に出走が叶わなかった菊花賞を勝利、それが産駒の初のG1勝利となりました。

ウイニングチケットの血が初めてG1を勝利

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雨の大阪杯を逃げ切り無敗の5連勝でG1に上り詰めたレイパパレは祖母オイスターチケットからウイニングチケットの血を受け継いでいます。父、母の父としてG1馬を出すことはできませんでしたが、ひ孫がG1を勝利しました。生きている最年長のG1馬ウイニングチケットはAERUのツイッターでよく登場して元気な姿を見せています。

スイープトウショウの弟がサウジダービー制覇

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2月に開催されたサウジダービーではスイープトウショウの17歳下の弟のピンクカメハメハが優勝しました。父のリオンディーズエピファネイアの弟、なのでスペシャルウィークの血も持っています。
今後の活躍が期待される中でしたが、残念ながらその後レース中の急性心不全で亡くなってしまいました。

スマートファルコンに春

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ダートで圧倒的な活躍をしてきたスマートファルコンですが、種牡馬としては苦戦していました。徐々に地方で活躍する馬が出始め、2021年にオーヴェルニュ東海S平安Sを勝ち、産駒初のJRA重賞の勝ち馬になりました。

ウマ娘血統はメジロの末裔

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ウマ娘にもたくさん登場するメジロの馬たち。メジロ牧場から事業を引き継いだレイクヴィラファーム出身のホウオウイクセルが3月にフラワーカップを勝利。この馬は現役トップクラスのウマ娘血統を持っている馬です。

日本血統の宝箱

特に血統表の2代目にキングカメハメハエアグルーヴスペシャルウィークメジロドーベルというダービーとオークスを勝った名馬がキレイに縦に並んでいるのは、とても美しい血統図です。レイクヴィラファームはTwitterアカウントを持っており、メジロドーベルから4世代揃った写真を公開されていました。

レイクヴィラファーム生産の今年の活躍馬はクールキャット(フローラS)とグローリーヴェイズ(香港ヴァーズ)もいます。
メジロを受け継ぐレイクヴィラファーム、国内G1勝利を待ちわびています。

MVPキングヘイロー

ウマ娘血統でMVPの活躍をしたのはキングヘイローでしょう。キングヘイローは母の父として2021年にJRA重賞を8勝(海外1勝)をあげ、重賞勝利の最多勝でした。しかも母父キングヘイローの出走頭数は100前後と非常に少なく、キングカメハメハ(約470頭)、シンボリクリスエス(約290頭)、マンハッタンカフェ(約210頭)と倍以上いる馬たちを抑えての達成です。

2020年にディープボンドが現れるまでの重賞勝利数は2勝。そこからピクシーナイトなど、7頭で10勝しています。ウマ娘のゲームでは迷えるウマ娘たちを導く先輩のようなポジションの彼女ですが、馬のキングヘイローは世界的な血統背景が時代を経て、母方に入って存在感を出す馬を多く出しています。
なぜ急に勝ち出したのかを説明するとそれだけで記事を作れる程奥深い血統的な理由があるので、それはプロの血統評論家の栗山求さんの解説記事や、知り合いのレスター伯さんの配信などを見てみてください。

2022年注目のウマ娘血統

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紹介したい2歳のウマ娘血統馬はイクイノックスという馬です。
この馬は父が新種牡馬キタサンブラック、母父がキングヘイローという馬です。

キタサンブラックは逃げ先行で活躍した馬でしたが、イクイノックスは祖父ブラックタイドの兄ディープインパクトのような強烈な末脚で東スポ杯2歳Sを勝利し、クラシックの有力馬に躍り出ました。初年度のキタサンブラック産駒は約80頭いるのですが一番の活躍をしているのがこういうウマ娘血統なのが、「ウマ娘持ってるな」という気持ちになります。

ドラマに溢れていた2021年

2021年は既にこの記事で書いた事以外にもドラマチックな事がたくさんおこっていました。特に紹介したいのはこの1年を盛り上げた横山武史騎手と福永祐一騎手の名勝負です

相手の勝ちたいレースを勝つ

エフフォーリアのダービーの敗戦は武史騎手を大きく成長させる起点になった出来事かもしれません。横山武史騎手はダービーの事を「思い出したくもない」出来事として振り返っています。それほどの「どうしても勝ちたいレース」でした
ダービーに敗れたことでエフフォーリアは菊花賞ではなく、天皇賞(秋)に向かうことになりました。そこで福永騎手が騎乗していたのが3冠馬コントレイルです。最後の勝利は菊花賞3冠馬の強さを示すために古馬のタイトルを「どうしても勝ちたいレース」だったはずです。そこで今度は武史騎手がコントレイルに完勝し雪辱を果たします。めちゃくちゃカッコよかったです。
私はコントレイルを応援していたので、彼が負けてしまった落胆が大きかったのですが、ウイニングランで今までの鬱憤を晴らすかのようなガッツポーズと恐らく泣いているだろうという表情を見て、思わず目頭が熱くなりました。
新しい若い力が伝説を作った瞬間に立ち会ったんだなという確信を得た瞬間でした。

もしエフフォーリアがダービーを勝っていたら、2年連続の無敗3冠を目指して菊花賞にいっていたはず。
もしそうなっていたら、「エフフォーリアは菊花賞を勝っていた?」「タイトルホルダーはどうなっていた?」「コントレイルVSグランアレグリア天皇賞(秋)の一騎打ちはどうなっていた?」
現実の世界では福永騎手のシャフリヤールが勝ったことで武史騎手は菊花賞は別の馬で勝ち、天皇賞(秋)をエフフォーリアで勝ちました。
シャフリヤールの10㎝から回り始めた運命の巡り合わせがこの秋を盛り上げる起点になりました。

コントレイル、名誉を守る戦い

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天皇賞(秋)の敗戦で、ラストランのジャパンカップ福永祐一騎手とコントレイルにとって名誉をかけた戦いになりました。
今年のコントレイルに対する声の一部には明らかに本来の能力以上の過小評価をしているものがありました。デアリングタクトとともに、パンデミックの沈んだ世界に現れた希望の光でした。
しかし、ジャパンカップで負け場合に「古馬G1を取れなかった3冠馬」というネガティブな歴史残る事は避けられないと思っていたので、正直ジャパンカップを見るのがめちゃくちゃ怖かったです。父ディープインパクトジャパンカップもこんな感じだったな、思い出しながら、この日は勝利という結果がどうしても欲しいレースになりました。
ただ、今の福永騎手はダービーを初めて勝ってからは「プレッシャーすら楽しめて臨める」というニュアンスの発言をするなど、名実ともにトップジョッキーになっていました。
今度は必ず決めてくれると祈りながらレースを見守りました。
コントレイルは夕日のターフを疾走し本来の走りジャパンカップをトップでゴールしました。レース後、福永騎手が目に涙を浮かべながらスタンドに戻ってくる姿、ダービーでは無人の観客席にした一礼をお客さんがいる中で再び行う姿に大変感動しました。

福永騎手のインタビューでも「彼の強さをもっと知ってほしかった」「本当に凄いところは3000mを走れる馬じゃない(のに菊花賞を勝った)こと」といった言葉が非常に印象に残りました。
ウマ娘的な表現なら中距離C~Dで、能力だけで3000mを勝ったといえるかもしれません。
そしてキャリアの多くを無観客、入場制限の中で送ったため、コントレイルが愛されていた馬だという事大きく感じたのは引退式で多くの人が残っているのを見た時だったそうです。

コントレイルの引退後の関係者のコメントをいろいろ聞いた時に、この馬は約30年前に距離の壁に挑んだミホノボルボンや、親子2代の夢をケガで叶えられなかったトウカテイオーが達成できなかった3冠を、関係者のサポートと馬の能力で達成した歴史的な名馬だと思いました。ありがとう、コントレイル

G1を手繰り寄せた運命のアカイイト

2021年に一番ドラマチックだった馬主は間違いなく岡浩二オーナーです。馬主としての重賞初勝利から一気にG1まで勝利しましたが、そのどれもドラマチックでした。

初重賞はジョッキーの引退レース

hochi.news

初重賞の京都ハイジャンプ三津谷隼人騎手の引退レース。マーニが最後の障害を飛越した後から中京競馬場では拍手が鳴りやみませんでした。

ヨカヨカからアカイイトに繋がる縁

2勝目はこの記事にも書いたヨカヨカの北九州記念です。この時の縁でエリザベス女王杯アカイイト幸英明騎手が乗る事になりました。

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エリザベス女王杯では10番人気の低評価を覆し勝利、キズナ産駒としても初のG1勝利となりました。この時の実況は今年の中でもかなり好きです。

ドラマチックな縁でG1を手繰り寄せたアカイイトの人気は急上昇、有馬記念のファン投票ではトップ10入りの7位になり、これが幸英明騎手とって初めての有馬記念出走になりました(7着)

妄想が止まらない

ここまで解説してきたように、2021年の競馬は非常に濃密な1年でした。それにウマ娘のヒットが重なった結果、現役馬を喋らせる二次創作のイラストや文章をSNSで公開する人や、そうでなくとも自分のように頭の中で妄想する人が結構現れました。
古くはよしだみほ先生、近年のおがわじゅり先生等がやってきた路線ですが、ウマ娘のおかげで今まで交わる事のなかった関係性オタクと競馬が交わった結果、大変な事になりました。SNSで検索するのが楽しいです。

とある一声でグランアレグリアはアホの娘に!?

その中の筆頭になったのはマイル女王のグランアレグリアです。最終的なキャリアは短距離のG1を6勝しましたが、今年の大阪杯で初の2000mを挑戦したときに藤沢和雄調教師の発したある言葉がめっちゃバズってしまいます。

グランアレグリアは距離延長に気付いていないのでがんばってくれる

藤沢和雄 2021年大阪杯インタビュー

これ以降彼女は「マイルを走ると思いこまされている」馬になってしまい、レースの旅に彼女のファンアートがアップされたり、ネタにされるようになりました。

一方で彼女の母タピッツフライは2018年に亡くなり、唯一の弟ブルトガング新馬戦勝利の後に病死してしまい、グランアレグリアは母が残した唯一の馬になっています。
グランアレグリアは無事に引退を迎えられたので、元気に血を繋いでいってほしいです。

#ラヴマル

BCを制したラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌにも北米滞在中の仲良しエピソードが多くSNSにアップされ、この2頭のどちらが欠けてもこの快挙は達成できなかったと思っています。

2頭は一口クラブ馬

この2頭は最近のトレンドである一口馬主クラブ馬で、実際の馬主になるわけではありませんが、クラブ会員になり馬に出資して権利の一部を買うことで馬主体験ができる競馬の楽しみ方です。そのため、出資者向けに馬の近況がウェブサイトに掲載されるため、個人馬主より馬の性格や普段の生活に触れやすい環境になっています。
私はDMMバヌーシーの会員なので、出資していなくてもラヴズオンリーユーの情報を見れるのですが、その中で紹介されていたのが北米でマルシュロレーヌと行動を共にする姿でした。

その中で好きなのは、この2頭は「トレーニングもシャワーも食事も、馬房に入るタイミングも一緒」というかわいいエピソードです。海外遠征の慣れない環境で結果を出せた裏にはこの2頭のマンガにできるようなチームワークでした。

女王様だったラヴズオンリーユー

news.netkeiba.com

そんなラヴズオンリーユーも人に対しては当たりがキツいようです。引退直前の関係者のインタビューでは彼女の性格について以下のように話をしています。

ツンデレのデレはなくて、ツンとしてる馬で。痛めているところを触ろうとすると、とてつもない速い蹴りが飛んでくるので、うちのスタッフとかに「ちょっと触ってください」って言われると、正直触るの嫌ですね(苦笑)。

一時期トモを痛めて確認するために触った時とかは、ちょっと半端なくて…今でもやっぱり要注意馬です。体温測ったり何かしら馬房内でする時は、突然蹴り出すようなところはあります。

この気の強さがブリーダーズカップ香港カップでの馬群を割って伸びてくる勝負根性の強いパフォーマンスに結びついているのだと思いました。

藤田晋社長の馬主デビュー

最後のトピックはサイゲームスの親会社サーバーエージェントの社長である藤田晋さんが馬主デビューをしたことです。

hochi.news

5月のセールで約5億円で落札されたドーブネや、7月のセレクトセールでの23億円の爆買いが注目されていましたが、デビューしてからの成績がスゴいんです。

驚異的な成績

2021年に購入した2歳馬の5頭のうち、既に4頭が勝ち上がり、さらにその中の3頭が2勝をしています。ドーブネは2連勝から朝日杯FSに駒を進め、G1初出走を果たしました。
さらにジャングロは先日の中京2歳(1200m)を3馬身半差でレコード勝ち。来年の短距離路線の主役候補の1頭になったと思います。

藤田オーナー自身も「出来すぎ」と言っていますが、来年以降にデビューする馬たちにも期待せずにはいらせません。始めてG1を勝った馬は確実にウマ娘になると思うので、応援して楽しむのもいいと思いますよ!

ウマ娘マネーを競馬界に還元

直接ではないにしろ、ウマ娘のおかげで大きく利益を出したサイバーエージェントの社長が競走馬を直接買って還元していく事はめちゃくちゃいい事だと思ってます。「競走馬の財産にただ乗りしてる」っていう方向に転んでもおかしくなかったと思います。藤田オーナーは馬主として成功する事しか考えていないと思いますが、こういう事が回り回って将来的に新しいウマ娘が追加される時にスムーズに進むようになってくれればいいと思いました。

おわりに

2021年の日本競馬は新時代の幕開けの1年になったと呼ばれると思います。グランアレグリア、ラヴズオンリーユー、クロノジェネシスなどの平成最後の年にデビューし競馬を牽引して来た世代の競走馬たちの多くが引退しまし、新時代の3歳馬エフフォーリアと若武者横山武史騎手の飛躍の1年になりました。

2022年も競馬とウマ娘で楽しい1年を送れることを楽しみにしています。